週9アーキテクチャ設計

2026-09-29(火)アーキテクチャ設計(Well-Architected)

この記事の目次
  1. この範囲の全体像
  2. 重要キーワード・サービス一覧
  3. 試験で問われる比較ポイント
  4. ひっかけ注意ポイント
  5. 一問一答セルフテスト

1. 【この範囲の全体像】

本範囲は、AWS Well-Architectedフレームワークにおける「コスト最適化の柱」の実践的な設計アプローチを学ぶ最重要エリアです [p.11, p.300]。

ただ安いサービスを並べるのではなく、需要と供給を動的に一致させる「需給の一致」[p.300]、システムの属性に応じた「インスタンス購入方法の使い分け」[p.301]、データのライフサイクルに基づく「アーカイブストレージの選択」[p.301]、および設計時に見落としがちな「データ転送コスト(通信料)の極小化」[p.302] を体系的に設計する能力が問われます。

試験では、「最もコスト効率が高く、かつ要件(可用性や許容ダウンタイム)を犠牲にしないアーキテクチャ」をロジカルに選択できるかが合否の境界線となります [p.311]。


2. 【重要キーワード・サービス一覧】

キーワード 説明
需給の一致 (Matching Supply and Demand) [p.300] システムが必要とする需要に対して、インフラリソース(供給)を過不足なく動的に一致させるアプローチ。無駄なアイドル状態の電力・コスト消費を根絶するため、Auto Scalingやサーバーレス(Lambda、Fargate)を徹底活用します [p.300]。
オンデマンドインスタンス (On-Demand Instances) [p.60, p.301] 事前の期間コミットや初期費用なしで、使用した分(秒単位または時間単位)だけを支払う最も標準的な購入形態。予測が不可能な短期のスパイク負荷や、テスト段階のワークロードに適します [p.60, p.301]。
Savings Plans (SP) [p.61, p.301] 1年または3年の期間、一貫したコンピューティング使用量(例:\$10/時間)を契約(コミット)することで、最大72%の劇的な割引を受けられる価格モデル [p.61, p.301]。
Compute Savings Plans [p.61, p.301] Savings Plansの中で最も柔軟な形態。インスタンスファミリー、リージョン、OS、テナント、さらに実行形態(EC2、Fargate、Lambda)をまたいで自動的に広範な割引が適用されます [p.61, p.301]。
スポットインスタンス (Spot Instances) [p.60, p.301] AWSが余らせている予備の空きコンピューティング容量(キャパシティ)を入札形式で利用することで、オンデマンド料金から最大90%オフで利用できる超低コスト購入形態 [p.60, p.301]。ただし、需要が逼迫すると2分前のシステム警告の後に強制中断(物理回収)される仕様制限があります [p.60, p.234, p.301]。
S3 ライフサイクルポリシー (S3 Lifecycle Rules) [p.104, p.301] データの作成日からの経過日数や最終アクセス日を基準として、データの保管場所(ストレージクラス)を安価なアーカイブ層(Standard-IA、Glacier、Deep Archive)へ全自動で遷移(移行アクション)、または自動消去(有効期限アクション)させるコスト最適化設定 [p.104, p.301]。
アウトバウンドデータ転送コスト (Egress Cost) [p.160, p.302] AWSからインターネットなどの外部へ送信されるデータ量に対して発生するネットワーク通信料金。データ送信量(GB)に比例して課金されるため、CloudFront(CDN)を用いたキャッシュ戦略が最良の抑制対策となります [p.160, p.302]。
AWS Cost Explorer [p.258, p.302] 過去のAWS使用コストと利用状況をグラフで視覚的に分析し、将来最大12ヶ月間のコスト予測や、割引プラン(SPやRI)の購入推奨事項を自動算出してくれる、基本無料の分析ダッシュボードツール [p.258, p.302]。
AWS Budgets [p.258, p.302] 設定したカスタムコスト予算(またはリソース使用量)に対して、実際のコストや「AIによる自動予測コスト」がしきい値(例:予算の80%など)を超過した際に、即座にSNS通知や管理者にアラート(またはEC2インスタンスの強制停止アクション等)を実行させるコストガバナンスツール [p.258, p.302]。

3. 【試験で問われる比較ポイント】

① コンピューティングコストの最大化:オンデマンド vs Savings Plans vs スポット [p.60, p.61, p.301]

ワークロードの「継続期間」と「中断に対する許容度」から、適合させるべき最も安価な購入方法を正確に決定するための境界表です [p.60, p.61, p.301]。

比較項目 オンデマンド [p.60, p.301] Savings Plans [p.61, p.301] スポットインスタンス [p.60, p.301]
割引率(コスト効率) 割引なし(基本の100%定価料金) [p.60]。 最大約72% の高割引 [p.61, p.301]。 最大約90% の極大割引(最安値) [p.60, p.301]。
契約期間コミット 完全なし(使った分だけの従量課金) [p.60]。 1年 または 3年 の利用総額コミットが必要 [p.61, p.301]。 完全なし(余剰容量が存在する限り最安) [p.60, p.301]。
中断リスクの有無 なし(ユーザーが終了しない限り永続動作) [p.59]。 なし(確実に継続動作) [p.61]。 あり(AWSが必要とした際、2分前警告の後に強制終了) [p.60, p.301]。
決定的な選定シグナル 「 アクセス推移が完全初見で予測不能、かつ本番用に安定稼働させつつ不要になったら数時間で即時解約したい 」 「 1年以上にわたり、EC2、Fargate、Lambdaを定常的に使い続けることが確定しているコアシステム基盤(予測可能) 」 「 データ中断が発生しても後から何度でもリトライ(再実行)が効く、ステートレスなバッチ処理や機械学習、分散コンテナ処理 」 [p.60, p.234, p.301]。

② ネットワーク設計の落とし穴:通信経路ごとのデータ転送コスト [p.302]

「どこを通信が通過するか」によって、データ転送量課金がステルスで発生します。この経路設計を見極める表です [p.39, p.107, p.302]。

接続経路・アプローチ データ転送コスト(通信料)の課金特性 [p.302] なぜこの設計がコスト最適なのか(理由) [p.39, p.107, p.302]
異なるAZ間のEC2通信 有料(同一VPC内であっても、アベイラビリティゾーンをまたぐとデータ転送量に双方向の通信料が発生する) [p.302]。 マルチAZによる可用性を維持しつつも、高頻度の巨大データ同期等は可能な限り「同一AZ内」のプライベートIPで処理を完結させる。
NATゲートウェイ経由のS3アクセス 高額な有料(インターネットゲートウェイへの通信として処理され、かつNATゲートウェイのデータ処理料金が重なってダブルで課金される) [p.39, p.107]。 閉域網接続である 「 ゲートウェイ型VPCエンドポイント 」 をアタッチすることで、NATをバイパスさせ 「 完全無料 」 の最短ルート通信に切り替える [p.39, p.107]。
インターネット(外部)への直配信 有料(EC2やS3から世界中のブラウザへ直接大きなアセットファイルを送信すると、GBあたりの高額な転送料金がかさむ) [p.160, p.302]。 前段に Amazon CloudFront をデプロイし、エッジにアセットをキャッシュさせて配信させることで、オリジン直接配信より安い「エッジ転送価格」を適用させて全体コストを下げる [p.160, p.302]。

4. 【ひっかけ注意ポイント】

  • ひっかけ①:定常稼働する「Lambda」や「Fargate」のサーバーレス構成に対して「EC2リザーブドインスタンス(RI)」で割引させようとする罠 [p.61, p.301]

    • 罠: 「現在、コンテナ化されたマイクロサービスとして、年間を通じて定常的に AWS Fargate および AWS Lambda がフル稼働している。この基盤コストを最適化するため、EC2 リザーブドインスタンスを購入して割引を適用させる。」
    • なぜ間違いか: リザーブドインスタンス(RI)は、原則としてEC2やRDSなどの「仮想サーバーインスタンス」にのみ適用される割引モデルであり、FargateやLambdaといったサーバーレスサービスのコンピューティング時間に対するコスト割引効果は1ミリも発生しません [p.61, p.301]。
    • ベストプラクティス: FargateおよびLambdaを含むサーバーレス構成の定常コンピューティングコストを最適化したい場合は、割引の適用範囲が極めて広い 「 Compute Savings Plans 」 を購入コミットしてください。これにより、同一契約からEC2、Fargate、Lambdaの利用時間に対して全自動で最大割引がシームレスに適用されます [p.61, p.301]。
  • ひっかけ②:異なるアベイラビリティゾーン(AZ)間に配備されたEC2間のデータ同期を、完全に「無料」であるとする通信コストの罠 [p.302]

    • 罠: 「システム性能と可用性を高めるため、同一リージョン内のプライベートサブネットに配備された、アベイラビリティゾーンA(AZ-a)とアベイラビリティゾーンB(AZ-b)のEC2間で、毎分ギガバイト単位の巨大データベース同期をプライベートIPを用いて定常通信させた。同一VPC内なので通信費用は一切発生しない。」
    • なぜ間違いか: SAA試験で非常によく狙われる盲点です。同じVPCかつプライベートIPによる通信であっても、アベイラビリティゾーン(AZ)の境界をデータが物理的に越える場合、データ送信(送信元)とデータ受信(宛先)の双方のEC2に対して「アベイラビリティゾーン間のデータ転送コスト」が有料で確実に課金されます [p.302]。
    • ベストプラクティス: 高可用なマルチAZ構成は耐障害性(信頼性)のために必須ですが、データベースの読み取りレプリカへの動機など、不必要かつ高頻度な大量データ通信を伴うインスタンス間通信は、パフォーマンスおよび無駄な通信料金を削減するため、可能な限り「同一のアベイラビリティゾーン(AZ)内」にトラフィックを集約・完結させる設計境界を意識します [p.302]。

5. 【一問一答セルフテスト】

選択肢を選ぶと、その場で正誤と解説が表示されます。