2026-08-14(金)VPC(ネットワークの土台)
1. 【この範囲の全体像】
本範囲(第2章2-3後半・まとめ、p.46-50)は、多数のVPCやオンプレミス拠点が混在するエンタープライズ環境において、ネットワークトポロジーをいかにシンプルかつスケーラブルに統合するかを扱います [p.46]。
1対1のVPCピアリング接続では不可能な「中継ルーティング(推移的ルーティングの禁止)」を解決し、複数の接続先を中心で一元制御する 「 AWS Transit Gateway 」 の仕様を深く理解することが重要です [p.40, p.46-47]。
試験では、接続の規模感(小規模なピアリングか、大規模なTransit Gatewayによるスター型集約か)とコストの最適化を天秤にかける設計判断が頻出します [p.47, p.51-52]。
2. 【重要キーワード・サービス一覧】
| キーワード | 説明 |
|---|---|
| AWS Transit Gateway (TGW) [p.46] | 複数のVPC、AWS Site-to-Site VPN、AWS Direct Connectなどの接続を集約し、クラウド上の仮想ルーター(ハブ)としてスター型トポロジーで中央ルーティングする接続管理サービス [p.46-47]。 |
| スター型(ハブ&スポーク)トポロジー [p.46] | 中央に「ハブ(中継拠点)」を置き、そこから各ネットワーク(スポーク)へ車輪のスポークのように放射状に回線をマッピングする論理構造 [p.46-47]。管理複雑性を一定(O(1))に保ちます [p.47]。 |
| フルメッシュ接続(スパゲッティ化) [p.47] | 多数のVPC同士を1対1で漏れなく繋ぐ手法 [p.47]。VPC数が「N」の場合、必要な接続数は「\\(N(N-1)/2\\)」となり、ルート管理や設定変更が破滅的に破綻します [p.47, p.51]。 |
| 推移的(Transit)ルーティングの禁止 [p.40] | VPCピアリングやDirect Connect ゲートウェイにおいて、接続された中間のネットワークを経由して「その隣のネットワーク」へ通信を踏み越えて転送することを禁じる仕様制限 [p.40, p.51-52]。 |
3. 【試験で問われる比較ポイント】
試験では、「 VPCピアリング」「Direct Connect ゲートウェイ」「Transit Gateway 」 の3つのルーティング範囲と限界の違いが鋭く問われます [p.40, p.45, p.46]。
① VPC間接続の使い分け:VPCピアリング vs AWS Transit Gateway [p.40, p.46-47, p.51]
| 比較項目 | VPCピアリング接続 [p.40] | AWS Transit Gateway [p.46] |
|---|---|---|
| 通信トポロジー | 1対1(P2P) の直接接続 [p.40]。 | ハブ&スポーク(スター型) の中央集約接続 [p.46]。 |
| 推移的ルーティング | 非サポート(A ⇔ B ⇔ C のとき、AからCへB経由では通信不可) [p.40, p.51-52]。 | サポート(TGWをハブとして、接続されたすべてのVPC間で相互中継ルーティングが可能) [p.47]。 |
| 大規模化への耐性 | 接続数が増えるほど設定・管理(ルートテーブル管理等)が指数関数的に複雑化する [p.47, p.51]。 | 接続数が数十〜数百に増えても、中央のTGWにアタッチするだけでルートが一元管理できる [p.46-47]。 |
| 課金・コスト構造 | 設定費用は無料(ピアリング内のデータ転送量にのみ課金)。 | デプロイされるアタッチメントごとの時間料金(基本料) + データ処理手数料が有料で発生。 |
| 試験での決定シグナル | 「 2〜3個程度の少ないVPCを、最も追加コストをかけずにシンプルに閉域直結したい 」 [p.47] | 「 数十〜数百のVPCがあり、それらの間で網の目のような相互通信やVPN・DX回線の動的な一括ルーティング共有を確立したい 」 [p.46-47, p.52] |
② ハイブリッド一元化:Direct Connect ゲートウェイ vs Transit Gateway [p.45, p.46-47, p.51]
| 比較項目 | Direct Connect ゲートウェイ (DXGW) [p.45] | AWS Transit Gateway (TGW) [p.46] |
|---|---|---|
| 接続の主目的 | 異なるリージョン・アカウントにある最大10個のVPC(VGW)へ、1本のDX回線を安価に集約接続する [p.45, p.51]。 | クラウド上のあらゆるリソース(VPC、VPN、DX)をスター型に相互通信ルーティングする [p.46-47]。 |
| アタッチしたVPC間の通信 | 不可能(DXGW自体にルーター機能はないため、VPC同士のパケット往来は完全に遮断される) [p.51]。 | 可能(オンプレミスへの閉域アクセスだけでなく、TGW配下のVPC同士も自由に高速中継通信できる) [p.47]。 |
| 試験での決定シグナル | 「 オンプレミスから複数リージョンのVPCへ専用線で繋ぐだけでよく、VPC同士を通信させる必要は全くない(むしろセキュリティ上、VPC同士は完全隔離したい) 」 [p.45, p.51] | 「 オンプレミスとの専用線接続に加え、複数のVPC同士も相互に通信させてマイクロサービス間連携を行いたい 」 [p.46-47, p.52] |
4. 【ひっかけ注意ポイント】
ひっかけ①:VPC-A、VPC-B、VPC-Cの3つがあり、VPC-Bを中心に置いてAとピアリング、Cともピアリングした。このとき、VPC-Bのルートテーブルにて「A宛てはピアリングAへ」「C宛てはピアリングCへ」と正しくパケット設定を書き込めば、VPC-AからVPC-CへBを経由して通信させることができる。
- 真実: 通信できません [p.40, p.51-52]。
- 理由: VPCピアリングには 「 推移的(Transit)ルーティングの禁止 」 という厳格な物理仕様制限があるため、中間に位置するVPC-Bのルーターを踏み台にして隣接VPCへ通信をスルー中継することは絶対に不可能です [p.40, p.51-52]。この要件では、AとCの間に直接1対1のピアリングを張るか [p.40]、3つのVPCを AWS Transit Gateway に接続して中央ルーティングを行う必要があります [p.46-47, p.52]。
ひっかけ②:1本のAWS Direct Connect(物理専用回線)を効率よく利用するため「Direct Connect ゲートウェイ(DXGW)」を構築し、そこへ3つの子アカウントのVPCをそれぞれ接続した。この状態で、各VPC同士が互いのプライベートIPを使って直接パケットを受け渡しできるようにルーティング定義を追加する。
- 真実: Direct Connect ゲートウェイを介して、接続されたVPC同士が互いに直接通信することは物理仕様上不可能です [p.51-52]。
- 理由: DXGWはオンプレミス ⇔ VPC 間のマルチリージョン・マルチアカウント引き込みを仲介するだけのオブジェクトであり、VPC間ルーティングの中継ハブとしては機能しません [p.45, p.51-52]。オンプレミスへの専用線接続と、VPC同士の相互通信を両立させるためには、必ず Transit Gateway を構築してDX回線(トランジット仮想インターフェース:Transit VIF)および各VPCをそこに接続するアーキテクチャが必須となります [p.46-47, p.52]。
5. 【一問一答セルフテスト】
選択肢を選ぶと、その場で正誤と解説が表示されます。